歯周炎による咬合崩壊症例の咬合再構成
症例は47歳女性、最近上顎前歯が出っ歯になってきたことを主訴に来院しました。
5年前までは上顎前歯に隙間はなかったと言っています。左上6番と左下7番が欠損していて、左大臼歯部の咬合支持はすれ違っています。
咬合は低下し、上顎前歯はフレアーアウトし、咬合時に下顎前歯の切縁が口蓋粘膜にさわる寸前です。左下3番歯肉にフィステルが認められます。
歯肉は著しく発赤腫脹し、上顎の歯列はアーチが拡大されています。たった2本の歯を失っただけなのに、歯周炎の進行によって咬合は崩壊寸前です。
デンタルX線所見においても、著明な骨吸収像が認められます。とくに左上457番と左下4番は予知性が危ぶられます。
プロービンク値もほとんどすべての歯に付着の喪失が認められました。
中程度から重度の歯周炎と診断して、初期治療を開始しました。
歯周初期治療後、矯正治療を奨めましたが、患者さんは、装置の装着を拒否されたので、補綴で審美的、機能的回復をはかることになりました。プロビィジョナルを装着しながら歯周組織と咬合の改善を施行しました。
プロビィジョナルにより咬合支持が回復されています。左下3番部のフィステルは消失しています。付着の喪失の著しかった左上臼歯部や左下4番は超音波スケーラー(スプラソン)のBDRチップによるルートプレーニングとペリオクリンによってバイオフィルムの破壊を繰り返し施行しました。
その結果歯周組織は徐々に改善されてきました。
イレギュラーだった骨レベルも改善傾向が認められます。
プロービング値もすばらしく改善されました。保存が危ぶまれた左上臼歯部や左下4番も良く改善され、予知性が期待出来そうです。
犬歯誘導によって、臼歯部はディスクルージョンしています。歯周炎の治療による炎症の除去と、適切なアンテリアーガイダンスの付与によって咬合性外傷から開放された左上臼歯部と左下4番は、初診時には保存が不可能ではないかと考えられていたにもかかわらず、たいへん良好な状態に改善されました。
最終補綴後の口腔内所見です。フレアーアウトは改善され良好な審美性を示しています。
臼歯部での咬合支持が確保されました。
歯周組織も良好に経過しています。
快適で良好なガイダンスが確保されました。
骨の不正は全体的に改善され、特に骨吸収像の著しかった左上457番、左下4番も、一応安定した状態を示しています。歯周組織の状態はたいへん良好であり、患者さんは機能的にも審美的にもとても満足されています。