小児歯科

小児歯科は0歳〜15歳までの小児の口腔内の異常全般を対象にしています。虫歯、外傷、炎症、歯の萌出異常、歯の先天性欠如などですが、やはりメインは虫歯ですので、ここでは虫歯についてお話します。


虫歯のない子に育てるために

虫歯のない子に育てるには、歯医者さんを上手に利用するというのが一番確実で簡単な方法です。
以下に年代順でお話します。長い文章を読む時間がないかたは赤文字をひろって読むだけでもいいです。

1 妊娠前
お母さんになる可能性のある女性は虫歯があったらきちんと治し、歯周炎についてもケアしておくことが大切です。
子供の虫歯菌のほとんどが母親由来といわれています。また妊娠中は歯周炎が悪化することがあります。軽度であれば出産後歯肉はもとに戻りますが酷くなってしまうともとに戻りにくく、その後も歯周炎に悩まされることになる可能性があります。




2 妊娠中
できれば虫歯は妊娠前に治しておきたいのですが、虫歯がある場合は出来る範囲で治療を済ませ、歯周炎が悪化しないように口腔内を清潔に保ちます。歯科医院を利用してお口の中をクリーニングすると効果的です。

虫歯菌を赤ちゃんにうつさないため、ご主人や、生まれてくる赤ちゃんのきょうだい、また祖父母の方達など、家族も虫歯の治療を済ませておきましょう。



3.出産直後〜最初の歯が生えるまで(生後0〜6ヶ月くらい)

個人差はありますが、だいたい生後6ヶ月くらいで最初の乳歯(下の前歯)が生えてきます。まだ歯がないうちは虫歯にはならないのですが、この時期にホームケアの土台を作っておくことが肝心です。

歯みがきをいやがらないようにするため、歯がないときからお口の中に異物が入る感覚を育てます。最初は清潔にしたお母さんの指やガーゼ(伸ばした爪はNGです)で歯ぐきや頬粘膜を触ります。生後1ヶ月くらいからは柔らかい歯ブラシを使ってもいいでしょう。決して力を入れず優しく触るようにしてください。(赤ちゃんは寝た状態で)

生後3ヶ月くらいからは歯みがきするときのように「あ〜〜ん、歯みがきしましょうね」と声かけをして、歌を歌ったりして楽しい雰囲気を作り、歯ブラシで歯みがきのトレーニングをします。歯ぐきを優しく触り、決して痛みを与えてはいけません。
生後5ヶ月くらいから、果汁やスープなどをスプーンで与えるなど、離乳を開始しますが、一度大人の口に入れたスプーンを赤ちゃんのお口に入れてはいけません。味見や温度の確認をするときは別のスプーンを使うようにしてください。




4.乳歯生え始めから第一乳臼歯が生えるまで(生後6ヶ月〜1歳半くらい)
この時期は離乳食を進め、卒乳を完了させたりやトイレトレーニングを始めたり、仕事を持つお母さんは仕事を開始したり、子供は保育園に行くようになったり、短い期間に様々なことが怒濤のように押し寄せてくる時期です。

寝っ転がっていた赤ちゃんはハイハイしてたかと思ったらあっというまに歩くようになり、チョロチョロ動き回って目が離せなくなります。育児は本当に大変です。そしてどうしても母親の負担が大きくなりがちですが、父親をはじめ家族みんなが協力して子育てを行いたいものです。そして歯に関しては歯医者さんを積極的に利用してください。

北海道では就学前の通院の医療費は助成されていますし、美唄市ではさらに12歳の就学前まで医療費がかかりません。

仕上げ磨きもこの頃から本格的に開始します。

左の図のように乳歯は全部で20本ありますがABCD16本が1歳6ヶ月から1歳8ヶ月くらいまでに生えてきます。

それではいつ歯医者さんに行ったらよいか解説します。

1) ちょうど1歳になった頃(黄色の歯が生えたら)に歯医者さんに行く
生後6ヶ月くらいで最初の乳歯下のA(乳中切歯)が生えてきます。その後上のA(乳中切歯)上下のB(乳側切歯)と図で黄色く縫った部分が生後1年くらいで生え揃います。この上下の切歯(前歯)8本がが生え揃った頃に一度歯医者さんに来てください。

最初に生えてくる下の前歯は唾液のおかげで虫歯になりにくいのですが、上の前歯は虫歯になりやすいのです。特に歯の間に隙間のないタイプは気をつけなければなりません。この生えたばかりの上の前歯にフッ素塗布をしたいのです。

フッ素塗布をして、歯みがきのしかた、フッ素入り歯みがき粉のの使い方、フロスのかけかたなどを指導します。おやつや飲み物の取り方などもお話します。人工乳も母乳もこの頃までに寝かせ飲みを辞めさせます。哺乳瓶でのジュースもいけません。

2)1歳6ヶ月〜1歳8ヶ月くらい(緑の歯が生えたら)歯医者さんに行く
そして2回目は緑のD(第一乳臼歯)が生えた頃です。C(犬歯)とD(第一乳臼歯)はだいたい同時期に生えてきますがCよりはDの方が虫歯になりやすいのでDが生えたらまたフッ素塗布をします。今度は奥歯の歯みがきのしかたやまた歯磨き粉の使い方、フロスのかけかたなどを指導します。


1歳6ヶ月検診に行くと、16本生え揃っている子と犬歯がまだ生えていない14本または12本の子がいます。歯の生える時期や生えてくる順番には個人差があります。虫歯になりやすいのはオレンジに塗った部分です。1歳半くらいでは上のA(乳中切歯)の歯の間、そして上下のD(第一乳臼歯)の歯の咬む面の溝のところです。この時期はまだ虫歯のない子がほとんどですが、既に虫歯のある子もいます。この時期に虫歯の治療をすることは非常に難しく、子供にも大変な負担となります。虫歯のない子に育てることは誰もが望むことですが、お母さんだけが背負い込まず、歯医者さんの力を借りてまた家族も協力して虫歯から赤ちゃんを守ってあげましょう。

5.乳臼歯が生えて、乳歯列が完成するまで(1歳半〜3歳くらい)
1歳半くらいから第一乳臼歯が生え始め。2歳半頃には第二乳臼歯も生え揃い乳歯列が完成します。3歳児検診に行くとほとんどの子の乳歯が生え揃っています。

最後に生えてくる第二乳臼歯(E)はとても虫歯になりやすいのにもかかわらず小学校高学年まで使わなければならないとても大切な歯なので、第二乳臼歯(E)が生えたら、歯医者さんに行ってフッ素塗布や予防充填をしてもらうとよいでしょう。

この時期になるともう赤ちゃんを卒業し、自分の意志で行動し、スプーンやお箸を使って自分で食事ができるようになります。ジュースや甘いお菓子など誘惑もいっぱいです。

乳歯はこの時期から虫歯になり始めます。
実際、1歳半検診ではほとんどの子に虫歯がないのに3歳児検診ではちらほら虫歯のある子がいますし、既に奥歯も前歯も虫歯という子も何人も見ました。

平成29年の全国統計によると
1歳6か月児では98.7%に虫歯がないのに3歳児になると85.6%になってしまいます。

歯は生えたばかりの時が一番虫歯になりやすく、この時期を乗り越えれば格段に乳歯う蝕を防ぐことができます。