ご質問 : 先日新聞か何かでインプラントした顎の骨の周りが浸食されてしまった記事を読みました。何か防ぐ方法などあれば教えてください。.....北広島市 Kさん

お答え : 現在主流となっているインプラントはチタンを素材としたもので、10年で90%以上の成功率をあげています。しかしそのためには、正確な診断、適応症の選択(無理なことはし ない)、適切な術前処置、熟練した手術技術、しっかりした術後管理、精密な上部構造(冠、ブリッ ジ、義歯)、定期的な精密検査、そしてもっとも大切なことは患者さんの協力です。 以上のことがらが満たされていれば、ご心配のような状態に陥ることは少ないと思われます。 しかし、インプラントは所詮、生体にとって異物でありますので、生体内に長期的に異物を留めて おくためには、先に述べたような慎重な対応が必要となります。  とはいうものの、患者さんのQOL(クオリティーオブライフ)にとって、21世紀の歯科治療では 、インプラントが必ずや歯科治療の中心となることでしょう。

さて、インプラントは周囲の骨が吸収して撤去になりますが、その原因のひとつは歯槽膿漏と同じで、プラークつまり細菌感染です。よってブラッシングが非常に大切です。これは患者さん自身 によって行われなければなりません。もう一つの原因は力であり、無理な力がインプラントにかか ることは禁忌であります。よって定期的に噛み合わせのチェックが必要です。これは歯医者さんが 行います。このように患者さんと歯医者さんの協力関係のうえに成り立つ治療方法なのです。 ご理解いただけたでしょうか。  .....吉村 治範




ご質問 : さし歯とインプラントはどうちがうのですか?..........川崎市 Fさん

お答え :いわゆる、さし歯は、歯の根をしっかり治療して、がっしりした土台をたてて、その上に冠を被せる治療です。この治療がうまく いくためには、歯根がしっかりしていることが大切です。しかし、なんらかの事情で歯が残らず抜歯になってしまうと、そこに,さし歯をするための歯根がすでになくなっていますので、その部分は欠損となります。よって取り外しの入れ歯か、まわりの歯をけずってブリッジを入れることになります。 インプラントはこの部分に人工の歯を骨の中に埋めて人工歯根とし、土台をたてて冠を作る方法です。装着感がとても良く、審美的で、機能的にもすばらしい治療法です。.....吉村 治範




ご質問:うちの3歳の息子の歯磨きに大変なこの頃ですが、虫歯はないようでもやはり定期検診は必要でしょうね。フッ素等の塗布はやはり有効ですか?......横浜市 Mさん

答え:フッ素塗布の有効性は諸外国の成果をみても、有効であることは間違いないと思います。我が国ではフッ素の毒性についてまだ完全な同意が得られておらず、国家全体の取り組みにはなっておりません。しかし国民健康保険の赤字で苦しんでいる地方自治体などでは、少しでも医療費の削減に取り組もうと、かなり予防に力を入れはじめているところが多くなってきました。その証拠に予防歯科の講演があると、歯科医師のみならず、市町村の保健担当者も多数参加されるようになってきたと聞いております。

では実際にはどのようにしたらよいのかということですが、ただフッ素塗布だけを行っても効果は少ないようです。北欧のアクセルソン先生の研究で興味あるデーターがあります。Aグループ(100人)は月に1回呼んで歯磨き指導とフッ素塗布(0.2%NaF)を行いました。Bグループ(100人)はまず両親を呼んで虫歯と歯肉炎の病因が磨きのこしによるバクテリアの繁殖つまりプラークであることを説明し、その予防法について説明しました。そして2ヶ月ないし3ヶ月に1回歯科医院にて、歯磨き指導とフッ素塗布を併用した歯科衛生士による機械的歯面研磨を行い、年に1回両親に状況説明をしました。その結果、Aグループは4年で941部位に虫歯ができましたが、Bグループでは61部位のみで約15分の1の虫歯の発生率でありました。

これの意味するところはフッ素塗布をただ行ってもあまり効果はなく、虫歯の病態を両親がよく理解し、予防プログラムを確立している歯科医院を定期的に受診し、プロフェッショナル.トゥース.クリーニング(専門家による歯面研磨)とフッ素塗布を行ってもらうことが、大切であるというのが結論です。おわかりいただけたでしょうか...吉村 治範



ご質問:ITI のインプラントの症例興味深く拝見させていただきました。 少し教えて下さい。
症例3で犬歯のインプラントをされていますが審美的な配慮が必要な場所です が、特に注意されていることはありますか?
かなり深い位置にインプラントを 埋入したほうがいいと思うのですが、どの程度を目安にしてますか。
ヒーリング アバットメントの長いものを使うのでしょうか?
治癒期間中のテックはどのよ うにつくってますか?
ちなみにわたしは広島でブローネマルクのインプラントの研究会にはいっている のですが、いまだに手術した経験はありません。ITIはつい最近臼歯部の欠損に12mmのフィクスチャを3本埋入(はじめての手術)して現在1ヵ月がすぎたと ころです。....歯科医師 Sさん

答え:ブローネマルクシステムでは13mm以上が当たり前のようですが、12mmのITIインプラントを臼歯部に3本埋入するのはたいへんだったでしようね。ITIの12mmの生存率はほぼ100%と聞いていますので、すばらしいケースになることでしょう。
 
さて、審美的な配慮が必要な場合、まず埋入深度は、生物学的幅径を考慮して、骨レベルより1〜2mm上方、両隣接歯のCEJを結んだラインよりも1〜2mm下方にインプラントのショルダーが位置するように埋入せよと言われています。また頬舌的には、適切な軟組織のカントゥァーを確保するためにインプラントの頬側骨壁が1mm以上存在するように、そして、隣接歯との調和と、清掃しやすいエマージェンスプロファイルを得るために、インプラントショルダー部の唇側縁が、両隣接歯の唇面を結んだラインよりやや内側位置するように埋入せよと言われています。しかし、あまり内側に入ると、リジラップ形態になってしまうので、注意が必要です。 当然インプラントの軸方向は、頬舌的には、上部構造の形態を考慮し、唇側への傾斜は補正できる範囲内に留めなければ、アクセスホールが、唇側を向いてしまいます。そして近縁心的には、両隣接歯と調和し、歯根を損傷しない方向に埋入されなければなりません。
 ヒーリングキャップは、深く埋入されているため、最初は2mmのヒーリングキャップを使用し、歯肉の治癒を待ち、その後、軟組織の厚みに応じて、4〜5mmの延長ヒーリングキャップを使用し歯肉の調整をせよと言われています。治癒期間中のテンポラリーは人工歯をスーパーボンドで固定しています。最終補綴前には、プロピジョナルで歯肉形態の調整をはかるとよいと言われています。
 以上簡単ではありますが、自分が施行時に注意している事柄について、述べてみました。先生の基準とも一致していれば幸いです。...吉村 治範 1997.7.24




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