家庭でできる口腔筋機能療法2 (幼児編)
食事やおしゃべりが苦手なお子様のために

副院長 吉村 裕美子


子供が自分の意志で行動するようになってからは、そんな子供の行動を利用して、日常生活や遊びの中で口腔筋を鍛えることができます。この時期にはまだ理解力が不足しているので、本格的な訓練はできませんが、ちょっと気をつけるだけで口腔筋機能は鍛えることができます。是非ご参考になさって下さい。


1.日常生活の中でできること
 
内容

解説

熱いお味噌汁やおかずを
「ふー、ふー」と吹く。

吹く機能を育てます。吹く動作は口唇、頬、舌などの
発語器官が協調して働くため、発語の基礎となります。
お味見をする。その1

吸う機能を育てます。吸う動作は発語や食事をする
基礎となります。
 「おいしいかなぁ?ちょっと味見してみてね」といって
小皿やスプーンに味噌汁やカレーなどのお料理をいれてすすらせます。
お味見をする。その2

舌の機能を育てます。
「おいしいよぉ! ちょっとなめてみる?」といって
ジャムや蜂蜜、クリームソースなどのついたスプーンやお皿、アイスクリームの蓋などをなめさせます。。
良く咬んで食べる。

あたりまえのことですが、以外と難しいことです。
子供と向き合って食べものを咬む動作を見せてあげたり、
咬む回数を数えたりします。
良く咬むようにおかずをちょっと大きめに切って与えるとよいかもしれません。

麺類をツルツルとすする

勢いをつけて音をたてて、すすります。
最初は短く1本ずつ、徐徐に長く、本数も多くしていきます。
親や指導者が美味しそうにすすって見本を見せてあげましょう。
ストローで吸う

ジュースなどをストローで飲みます。
ストローの種類もいろいろ試してみましょう。
食事について

食事の中で口腔筋機能は育っていきます。
栄養バランス、彩りのほかにもひとつ、口腔機能面に
ついても配慮すべきです。
たとえば、お蕎麦やスパゲッティのようにつるつるーと
すいこむもの。お味噌汁のようにすするもの。
柔らかいもの、堅いもの。冷たいもの、暖かいもの。
甘いもの、すっばいもの、辛いもの、塩辛いもの。
など献立を考える時に、口腔機能面でのバリエーションを考慮するとよいでしょう。

おや つ

口腔筋機能を育てるおやつには次のようなものがあります
するめ、すこんぶ、あめ、ガム、りんごなど。
歯みがき 洗面

歯みがきや洗面をとおして口の中や顔面に触れ、感覚を高
めます。

洗面後のスキンケア

洗面後、顔に化粧水をぴたぴたとたたくようにつけたり、
クリームをつけて顔をマッサージしたりする。
うがいをする

ぶくぶくうがい
がらがらうがい
ぺっと水を吹き出す動作
口唇+頬+舌+咽頭の筋が協調して働かなくてはなりませ
ん。

表情豊かに暮らす


笑ったり、おこったり、ないたり、歌ったり、、親や家族が表情
豊かににぎやかに暮らしていると、自然と子供も表情が豊か
になってくるのではないでしょうか。表情が豊か..ということは顔や口腔の筋肉が活発に働いているということです。
そんな環境を作ってあげましょう。


食事についてはそれだけでたくさんの本が出版されているほどで、簡単に説明はできません。障害の重いお子さんでミキサー食しか食べられない場合。また偏食が激しく、限られたものしか食べない場合..などいろいろなケースがあるので献立を工夫といってもなかなか難しいのですが、出来る範囲で工夫していただければよいと思います。

飴、ガムと聞くと虫歯の原因となるので、敬遠している方もいると思います。確かに歯にはよくありませんが、口腔筋を鍛えるにはもってこいのすばらしいおやつなんです。ガムは顎の筋肉を鍛え、飴は舌の筋肉を鍛えます。歯科医師という立場からいえば非常に複雑ですが、現在はシュガーレスのものも出ておりますし、時間をきめて与え、食べた後うがい+歯磨きをすれば、私は与えるべきと考えております。

またこんなお行儀の悪いことはしたくない..というような内容もあるかもしれません。そこはご両親または指導者の判断におまかせいたします。

先日テレビでこんなことをやっていました。欧米人は日本人に比べて顔面の筋肉が発達していて表情が豊かだというのです。その例として左右のまゆげを別々に動かすことができる日本人は少ないが、欧米人はほとんどの人ができるというのです。たしかに我が家にはまゆげを左右ばらばらに動かすことのできる人間はいませんでした。
その違いは生活環境にあるというのです。日本人の男性に「あなたの奥様は美人ですね」というとほとんどの人は、「はにかんだように微笑む」のに対して、欧米人の男性は「ありがとう」満面の笑顔で答えるそうです。表情豊かに暮らすって簡単そうでいがいと難しい..とくに日本人は苦手のようですがこころがけてみてください。


次へすすむ